タイトル

ラテンアメリカの国際経済への参入の「質」を考える:新構造主義派の見地から

要旨

ラテンアメリカ・カリブ (LAC) 経済が「なぜ長期にわたり停滞するのか、というパズル」を解き明かす鍵として、「新構造主義」と呼ばれる開発戦略を国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会 (ECLAC) が1990年代後半から提唱している。「新構造主義」は、これまでラウル・プレビッシュに代表される「構造主義」派の思想に新風を吹き込み、その分析領域は国際化が進む世界経済に適ったものである。本稿ではLAC諸国の国際経済への参入の「質」について、投資・国内貯蓄ギャップと経常収支赤字を補填する外資流入とブーム・バスト周期との関係、外資構成と経済成長との相関性、産業間と産業内でみられる生産性と競争力の異質性などのマクロ経済の視点に加えて、貿易構造の非多様化、輸出部門の「飛び地」化、製造業品輸出額 (MEX) と製造業付加価値 (MVA) の乖離、グローバル・バリューチェーン (GVC) 参入度と国内付加価値との関連性、などの貿易構造の問題について、新構造主義派の視点からASEAN (5) 諸国と比較しならが分析する。

連絡先

神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー
桑山 幹夫
E-mail: Mikio.kuwayama@gmail.com