RIEB Discussion Paper Series No.2015-J09

タイトル

小野浜造船所にみる技術移転の方法とその効率性~清国人職工の処遇からの考察~

要旨

本稿は,明治初期の日本において横須賀と比肩される技術力を有した小野浜造船所における技術移転の方法に着目し,これを近代日本の技術移転の中に位置付けたものである。この課題に対し,清国人職工への慰労金支給問題を検討することによって重要な示唆が得られる。本稿はこの問題の顛末を詳細に検討し,そこから小野浜の技術移転を考察する。小野浜造船所の技術移転は,横須賀と同様に外国人からの技術指導であったが,小野浜が急成長した理由は,英語を理解する清国人職工が存在したことにある。彼らは英語を理解する人物であり,熟練工でもあった。小野浜では,優れた人物を雇用するという元経営者キルビーの強い意思の下に,様々な国籍の人物が雇用された。その中で注目したいのは,清国人職工の役割である。彼らがイギリス人技師・職工と日本人職工の仲介者となったことにより,技術指導の効率性が高められ,高い技術力が形成されたのである。

連絡先

神戸大学大学院経済学研究科博士課程後期課程
(神戸大学経済経営研究所ジュニアリサーチフェロー)
小野寺 香月

※本ディスカッションペーパーは平成26年度兼松フェローシップ受賞論文です。