タイトル

我が国の住宅金融の高度化に向けた不動産・建設業企業の意識調査の結果について

要旨

筆者らは2014年9月に「我が国の住宅金融の高度化に向けた不動産・建設業企業の意識調査」を実施した。この調査では、我が国の不動産・建設業界の中小企業647社に対して調査票を送り、211社から回答を得ることができた。本稿はその回答結果の概要を報告することが目的である。
 興味深い回答結果としては、技術力および経営力を向上させるための取り組みについて尋ねたところ、「公的機関、業界団体等の実施する研修会等への参加」と回答した企業がほぼ半分(49.3%)であり、向上の取り組みが広く行われていた。しかし、「特に取り組んでいることはない」という企業も27.0%あり、従業員5人以下の企業では45.5%にも達しており、経営力向上のための取り組みが行えていない企業も相当数に達することも事実である。また、「金融機関に助言・支援を要請」も21.8%あり、金融機関の役割が重要なこともわかる。
 回答企業に対するメインバンクからの(不動産・建設事業に有益な)情報提供の頻度について尋ねたところ、メインバンクからの情報提供があると回答した企業と、メインバンクからの情報提供がないと回答した企業はほぼ同程度であった。メインバンクから提供される(不動産・建設事業に関連する)情報の有用性の変化について尋ねたところ、「変化がない」と回答した企業の比率が4割強であり、「以前よりも有用なものになった」はわずか13.7%にとどまっている。メインバンクから提供される経営全般(不動産に限らない)に対する情報や助言の変化についても「変化がない」と回答した企業の比率が4割強で最も大きく、「以前よりも有用なものになった」は2割弱にとどまっている。金融機関によるコンサルティング機能の強化が要請されているが、中小企業のレベルではまだ実感できていない企業が多いようである。
 中古住宅に対する融資姿勢や資産評価に関して金融機関ごとの差異について尋ねた回答結果からは、中古住宅への融資姿勢については金融機関の間で相当のばらつきがあるようである。中古住宅の流通市場の発達に対する障害について尋ねたところ、「築年数の古い住宅に対して金融機関の融資姿勢が消極的」と回答した企業の比率が約4割に達し、最も大きかった。中古住宅市場における金融機関の融資姿勢が大きな障害であるとの意識が強いことが明確になった。とくに、この意見は、規模の小さな企業ほど顕著であった。
 平成26年度税制改正で認められた買取再販で扱われる住宅の取得に係る登録免許税の税率の軽減措置に対して尋ねたところ、「知らなかった」が半数近くに達した。買取再販ビジネスへの新たな参入を促すために、業者に施策の内容をしっかりと伝えていく必要性があるが、この政策に限らずより一般的に言えば、政策的な支援策を(それを担うべき)業者にきちんと伝達し、活用されるように広報の仕組みの強化が求められている。
 中古住宅に関する瑕疵担保保険の利用が低調な理由について尋ねたところ、「保険制度が十分に認知されていない」と回答した企業の比率が最も大きく(44.5%)、一般消費者に対する啓蒙活動の必要性が伺える。最後に、瑕疵担保保険の利用を法令によって義務化することについて尋ねたところ、「義務化賛成」、「義務化反対」、「わからない」がほぼ3分の1ずつを占めており、業界の中でも意見が割れている様子がうかがえた。

連絡先

神戸大学経済経営研究所
家森 信善
E-mail: yamori@rieb.kobe-u.ac.jp

愛知淑徳大学ビジネス学部
高久 賢也