タイトル

サービタイゼーション研究のレビューと今後のマーケティング上の課題

要旨

サービスを製品と組み合わせその統合された提供物を事業の中心に据えることを,一般にサービタイゼーションと呼ぶ。サービタイゼーションに関連する研究は,売上や収益を改善したり,新たな市場機会を拓くといったようにその肯定的側面を取り上げるものもあれば,サービタイゼーションが必ずしも財務的結果につながらないなど,サービタイゼーションに取り組むことによって企業は新たな課題に直面するといった意見もある。本稿は,こうしたサービタイゼーションの複雑な側面を議論するための基本整理として,先行研究を六つの論点に分けレビューを行う。その六つとは,概念化,先行要因,移行プロセス,価値提案と価格付け,サービスデザインである。それらの論点はゆるやかな時系列に沿って議論が展開され,その知見の蓄積をレビューすることにより今後中心的な議題も示唆される。つまり,サービタイゼーション事業を通した継続的な競争優位の確立を議論の射程とする,時間的プロセスの視点とバリューネットワークの視点の重要性である。最後に,サービタイゼーションは学際的な研究関心を集める領域であるが,本稿では特にマーケティング研究の観点に立ち,今後のマーケティング上の研究課題として,時間性を考慮した「意のままにならない」他者との関係性のマネジメントおよび,関係性を重視することでサービタイゼーションが進展したソリューションという新たな事業や市場生成を提案する。

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