タイトル

中央銀行制度改革の政治経済的分析(試論):歴史的視点と憲法論的視点

要旨

本稿は、日本銀行を念頭に、その制度改革について政治経済的な分析を試みたものである。まず本論では、歴史的な視点から、明治の創設期、昭和戦時期の改正、現行法となった平成期の改正について分析を試みた。制度改正には、経済のみならず政治的な背景も大きな影響を与える。そして制度改正の成否はその政治的な改革理念がどの程度活かされているかにも大きく依存する。1997年に改正された現行日本銀行法は、世界標準と比べてもそん色のないものである。にもかかわらず、この間日本銀行には批判が寄せられ、その中には日本銀行法の見直しも指摘されている。こうした状態に至ったのは、単に日本銀行の政策運営についての批判のみならず、当時日本全体で試みられた政治経済的な改革の一環として現行日本銀行の改正が行われたことが十分理解されていないことにも、影響されているものと思える。
筆者は、現行日本銀行法での独立性の強化は、当時の政治経済制度改革の分権の強化という理念に通じるものと考えている。中央銀行の独立性については、憲法論的な検討が必要とされるが、これはまさに中央銀行制度は憲法の理念である分権や民主主義の視点から検討してこそ、デフレやインフレに影響されない普遍的な意味での独立性の意義が明らかになることを意味している。そこで本稿では付論として、中央銀行の独立性を分権や民主主義の視点から検討するに当たってのポイントを整理した。

キーワード

日銀条例、日本銀行法の改正、行財政改革、分権、権力分立、チェック・アンド・バランス、中央銀行の独立性

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