タイトル

受注残高情報と将来業績

要旨

 本稿では,有価証券報告書の「事業の状況」で開示される受注残高情報が,将来業績を予測するための先行指標として機能するか否かを検証する。分析の結果,前期から当期にかけての受注残高変化は,翌期の正味営業資産利益率(RNOA)変化をはじめとする様々な将来業績と強い正の関連性を持つことが分かった。また,そうした受注残高情報が将来 業績に対して有するインプリケーションを,投資家は適切に理解しており,当期の受注残 高が公表されるまでにはその情報を株価へと織り込んでいることを発見した。しかしながら,その織り込みの程度は十分なものではなく,結果的に当期の受注残高変化が大きい銘柄ほど,将来リターンが高くなる傾向にあることも併せて発見した。この証拠は,当期の 受注残高変化を投資家が過小に評価していることを示唆するものである。

キーワード

受注残高情報,ファンダメンタル分析,市場の効率性,ミス・プライシング

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