RIEB Discussion Paper Series No.2011-J03

タイトル

韓国における受託製造加工の効率性に関する決定要因分析

要旨

本研究の目的は、韓国製造業の受託製造加工に従事する企業を、技術的効率性の観点から分析することにある。韓国の製造業に関する効率性の分析においては、産業別の分析が行われてきたが、同一産業内でも製品を製造する企業と原材料の提供を受けて組立加工を行う受託企業では生産技術が異なり、それぞれ別のものとして分析する必要があると考えられること、また、多くの産業で見られる中小企業の主要な事業分野として受託製造加工を分析しておくことは、中小企業支援策の観点からも重要であると考えられること、さらに、今後韓国での創業を考える企業にとっても外注加工を始めとしたアウトソーシングの活用は重要であり、受託企業の特性とパフォーマンスとの関係は利用側の企業にとっても強い関心事になると考えられる。こうした観点から、本研究は、確率的フロンティア分析(Stochastic Frontier Analysis)を利用し、受託製造加工における効率性の決定要因を考察する。
統計庁の2006年度版「鉱業・製造業調査」のマイクロデータを使用し、主要8産業で受託製造企業と製品製造企業に分けて分析した結果、企業年齢、外注利用と効率性との関係が受託製造、製品製造の共通点として明らかになり、非生産職比率、販売シェア、地域企業数、国家産業団地と効率性との関係が受託製造、製品製造の相違点として確認できた。まとめると、製品製造に関しては、高い非生産職比率や販売シェア、法人組織は必ずしも高い効率性に結びつかず、受託製造に関しては、企業年齢、販売シェア、非生産職比率などの低さが、効率性にマイナスの影響を与えていることが明らかになった。また、外注利用に関しては、製品製造企業が効率化のために利用すると考えられるが、受託企業においても外注利用と高い効率性との関係が確認できた。さらに、集積の効果に関しては、製品製造は地域企業数が、受託製造は国家産業団地が効率性において重要な役割を果たしていることが明らかになった。

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