タイトル

インド製薬産業における生産性ダイナミクス―「年次工業調査」の個票データを利用して―

要旨

本論文は、事業所を単位とする「年次工業調査」(Annual Survey of Industries)パネルデータを用いて、事業所レベルでみた新規参入と退出を明示的に考慮したうえで、インド製薬産業の生産性ダイナミクスに関する実証分析を行った。2000-01年から2005-06年までを分析対象期間とし、Aggarwal and Sato(2011)に倣い、Foster, Haltiwanger and Krizan(2001)、Griliches and Regev(1995)やMelitz and Polanec(2009)などの要因分解手法を用いて、集計レベルのインド製薬産業の生産性変化を、存続事業所・参入事業所・退出事業所などのタイプの異なる事業所の貢献部分に分解した。本論文は、製薬産業の立地空間構造を考慮して、インドをエリア1(ヒマーチャル・プラデーシュ州、ウッタラカンド州)、エリア2(デリー、ハリヤーナー州、パンジャーブ州)、西南部を、エリア3(グジャラート州、マハーラーシュトラ州、ゴア)、エリア4(アーンドラ・プラデーシュ州、カルナータカ州、タミル・ナードゥ州)、エリア5(その他)の5つのエリアに分類した。エリアごとに行った要因分解の分析結果から、以下の諸点が明らかになった。第1に、地域ごとに多様な生産性成長パターンが見られる。とくに、エリア1からエリア4でみて、生産性が大幅に改善している。第2に、労働生産性と総要素生産性(Total Factor Productivity)でほぼ同様の地域パターンが観察される。第3に、エリア1で参入効果が著しく高い。第4に、退出効果についてはプラスともマイナスとも言えず、頑健な結論が得られなかった。第5に、エリア2から4で継続事業所の生産性改善効果であるWithin効果が大きい。第6に、エリア3において継続企業のマーケットシェア拡大効果である再配分効果が生産性改善に貢献している。最後に、州レベルの分析においても、ほぼ同じ結果が得られた。

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デリー大学ビジネス経済学研究科
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