タイトル
確率的フロンティア分析を用いたブラジル企業の生産性の実証研究

要旨

本稿は、ブラジルの企業に関し、貿易自由化と生産性の関係を実証することを目的とする。World BankのInvestment Climate Surveyを用い、確率的フロンティア分析の手法でトランスログ生産関数と技術的非効率性決定式の同時推定によってTFP成長率を求め、その決定因を貿易自由化もしくは企業のオープンネスを表す変数によって回帰する。明らかとなったいくつかの点を列挙すると、
(1) ブラジル企業のTFP改善に対する効率性改善と技術進歩の寄与率は、それぞれ0.583と3.587であり、技術進歩による寄与が圧倒的に大きかった。
(2) TFP成長に対し、オープンネスの影響として、輸出企業であること、輸入資本財・輸入投入財を利用していること、外資の資本参加があることが強く有意であった。1993-99年の関税引下げ率の影響は認められるが、輸入競争は負の関係にあり、海外進出の影響は認められなかった。
(3) 関税引き下げに関しては、各産業の関税引き下げ指数、産業ダミーともに有意であった。したがって、貿易自由化が一巡した2000年代以降も、関税の引き下げが生産性改善に影響しているといえる。
(4) 技術的効率性(TEC)に対しては資本財輸入を除き、オープンネスの指標は強く有意であるとはいえなかった。このことは技術的効率性の改善には本稿では考慮されなかった要因が存在することを示唆している。


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